野﨑家の漆器展の開催中です。
一つご紹介します。
魚貝尽くし絵替蒔絵吸物椀
アカエイ、ヒラメ、タイなどの魚介に笹を添えた図様が青漆(せいしつ、深い緑色)地の椀に描かれる。蓋の裏には「蕙齋筆」とあり、津山藩の御用絵師を務めた鍬形蕙斎による『龍之宮津子』などの略画図に範をとっている。
これは2022年の野﨑家のカレンダー(7・8月)に掲載し、説明書きもそのままです。
短い文章ですので紹介できることは少なく、それはまあある意味書き手にとって都合のいいことでもあったわけですが、あえて書くことが出来なかったことについてご紹介です。
抱えた問題は3つです。
魚の種類がわからない。
これほんとに蕙斎?
どこから絵を引いた?
以上が解決しませんでしたという言い訳が以下述べられますので気を付けてください。
まず鍬形蕙斎(くわがたけいさい1764-1824)とは誰でしょう。
最初は江戸で北尾重政の弟子として浮世絵師をやりました。
名前も北尾政美(きたおまさよし)です。
北尾政美は浮世絵や黄表紙などを制作していましたが、
寛政6年(1794)に美作国津山藩主 松平康哉に御用絵師として召し抱えられます。
まもなく「蕙斎」と号を改め、「鍬形」への改姓が許されました。
浮世絵師から御用絵師へと大出世をした人ですが、
明治時代から現代に至るまでそれほど大きく語られる人ではありませんでした。
同時代の葛飾北斎の人気とは対照的でもあります。
しかし近年では、
かの有名な『北斎漫画』に先駆けて蕙斎は『略画図』を手掛けていたことの再評価、
東京スカイツリーの展望室に「江戸一目図屏風」の複製パネルが展示されるなど、
その名声を回復してきた…んでしょうか? どうなんでしょう。
ともかく、
鍬形蕙斎は広く名を知られる偉大な絵師であったということです。
また『略画図』シリーズもそうですが、大量の版本を出版しており、だれでも蕙斎の絵を参照することができました。
つまり蕙斎でなくても、蕙斎の絵は描けます。
と、いうことをのたまうのであれば、その参考にした本を見れば全部わかるんだろう、ということになる筈ですが、なんかよくわかりませんでした…。
蛇足でしょうが、せっかくなので本を紹介します。
『龍乃宮津子』(たつのみやつこ)という本です。
出版年は享和2年(1802)で、一陽井素外の編集による俳諧に蕙斎の挿絵を加えたものです。
ちなみに同年『魚貝譜』という名前に変え、句の作者名を省略し、さらに文化10年(1813)には『魚貝略画式』という名で、句もすべて消した挿絵だけの状態で出版されています。
画像11点 国立国会図書館デジタルコレクションより引用
いくつか抜き出してみましたが、実際に似ているのは蟹とエイと貝ぐらいでしょうか。
他はよくわかりません。
魚が苦手な私には何が描いてあるのかもよくわかりません。
本作はさぞ魚介のスープに使用されていたことでしょうが、野﨑家に確認する現存数は10合です。
もう一箱(10合)あったようですが、修理のために出されて、それが戻ってきていないように思われます。
あと10合には何が描かれていたんでしょうね。
野﨑家の漆器展~カレンダーとともに~
令和3年11月25日(木)~令和4年1月30日(日)
開館時間/9:00~16:30(17:00閉門)
休館日/月曜日ただし1月10日(月)は開館、1月11日(火)は休館)
12月25日(土)~1月1日(土)休館
1月3日(月)は開館します。
入館料等:大人/500円 小中学生/300円
※小中学生および高校生は、毎週土曜日・日曜日・祝日は無料です。
TEL(086)472-2001
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